2013年10月12日土曜日

中国の石油輸入の安全保障担う米軍:だが、中国は米国の中東政策を支持せず

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●ペルシャ湾を進む米国の軍艦(12年)


ウォールストリートジャーナル     2013年 10月 11日 20:39 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303836304579129043718950128.html?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesFirst
 By     BRIAN SPEGELE、MATT BRADLEY

米中間の緊張、中東産原油も火種に

 中国は中東産石油の買い手として米国を抜きつつある。
 同地域の安全保障をめぐる外交上の緊張に燃料が加わることとなる。

 中国が数年前にペルシャ湾の原油輸入において米国を抜いたことを示す指標もある。
 中国は今年、おおむね中東のエネルギー輸出圏から構成される石油輸出国機構(OPEC)からの石油の買い手において米国を抜いて1位にランクされる見込みとなっている。

 こうした転換が緊張に拍車をかける理由は、
★.中国政府が米国の中東における外交方針を支持することに消極的な中、
★.中国の増加する中東地域からの石油輸入の安全保障を万全にする役割を米軍が担っている
ことにある。

 長年にわたり、中国や他の石油消費国は、
 米政府がホルムズ海峡を始めとした中東の不安定な難所の警備に「年間数十億ドル」を費やす
ことから恩恵を受けてきた。

 しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルが世界のデータを最近分析したところによると、北米のシェールオイル・ガス業界の台頭によって、
 米国は石油・ガス生産においてロシアを抜いて世界1位にすでになっているか、少なくとも年内にはなる見込み。

 米国のシェールオイル・ガスの増産と横ばいの国内石油消費の組み合わせによって、
 米国の中東産を含む輸入石油への依存度は大幅に低下している。
 一方、中国の同地域の石油への依存は高まっている。

 コンサルティング会社ウッド・マッケンジーによると、中国の1-6月期のOPEC産原油輸入は日量370万バレルと米国の同350万バレルを上回った。
 このペースでいくと中国の今年のOPEC産原油の輸入は年間ベースで初めて米国のそれを上回るとウッド・マッケンジーは述べた。
 3位はインドで日量340万バレル前後。

 2004年には、OPECからの輸入は米国が日量500万バレル前後、中国は同110万バレル前後だったとウッド・マッケンジーは明らかにした。
 OPEC幹部は、中国が同ブロックの最大顧客となったかを明らかにすることは避けた。

 中国のサウジアラビア、イラク、アラブ首長国連邦(UAE)などOPEC諸国からの輸入はここ数年で急増したことを中国税関統計は示す。

 他の指標でも中国と米国の地位は入れ替わろうとしている。
 米国は全世界からの原油輸入では引き続きトップにつけている。
 しかし、米エネルギー情報局(EIA)の最新データは、中国が純石油輸入で米国をやや上回ったことを示す。
 純石油輸入の定義は、合計液体燃料消費から国内生産を引いたもの。

 中国の9月の純輸入量は日量630万バレル、米国は同624万バレルとなったことをEIAの統計は示した。
 米国のエネルギー生産ブームは純輸入値の低下に寄与した。

 また、EIAおよび中国の税関統計によると、中国のペルシャ湾からの輸入量は間もなく米国のピークであった01年の水準を超える。
 ペルシャ湾の原油について米国を超えたのは09年だった。

 中国の中東石油の最大買い手としての台頭は同国と米国に難題を突きつけている。
 中国にとって、これは米軍が権勢をふるう地域の石油に経済が依存していることを意味する。
 タンカーがペルシャ湾から中国へと向かう際には、この地域を監視する米第5艦隊に依存する部分は極めて大きい。

 米政府にとって、中国の石油需要は多くの米国人が戦略的ライバルとみなし、外交政策においてしばしば米国と意見を異にする国に恩恵をもたらす軍事支出を正当化するもの。

 緊張の兆しは浮上している。
 両国間の最近の協議に詳しい筋によると、中国政府は米政府に対し、ペルシャ湾地域の安全保障を維持するよう念を押している。
 中国は自らこれを成し遂げるだけの軍事力を持っていない。

 少なくとも昨年の協議以来、中国政府高官は、特にオバマ政権が東アジアに戦略的重点をシフトすると公言しているだけに、米国の同地域へのコミットメントに揺るぎがないことを確認しようとしていると事情に詳しい関係者は述べた。

 その見返りに、米政府高官はシリアやイランにかかわる外交政策について中国の一段の支援を求めている。
 関係者によると、例えば米政府高官は中国に対し、非公式にイランからの原油輸入を縮小するよう促している。

 一方、中国政府は国連でシリア政権に対する厳しい措置を阻止したと米政府要人から批判を浴びている。
 事情に詳しい関係者によると、米政府の現旧高官らは中国勢に対し、中東からの安定したエネルギーの流れには中国政府による今後の協調拡大が必要になると伝えている。

 中国の外務省は、この記事向けの質問状に答える形で、中国の中東との石油取引は「国際的な事業慣習に沿った双方に利益をもたらす」ものであるほか、中国は地域の政治的包括性、経済的反映、平和と安定を望むと述べた。

 4月にワシントンで開かれたブルッキングス研究所のコンファレンスでは、中国の国家エネルギー局の元トップ、張国宝氏は、中国は中東の海上交通路の防衛により大きな役割を担う可能性があるのかとの質問を受け、「現時点でアメリカ人がこの役割を果たせないのか」と答えた。

 ワシントンの戦略国際問題研究所の中東担当ディレクター、ジョン・アルターマン氏は
 「米国はグローバルシステムの構築に時間、労力、資源をつぎ込んできた」
とする一方、
 「中国は世界的大国となりつつあるが、グローバルシステムの構築というアイデアに全く投資していないよう見受けられる」
と述べた。

 米国にはイスラエルの保護や日本や韓国など同盟国のための海上交通路の補強など中東に大きなプレゼンスを維持する利害が他にもある。
 また米国が中東において中国軍の関与が近く拡大した場合にこれを歓迎するかも不明だ。
 これは同地域における米国の役割を脅かす可能性もある。

 アジアの国がペルシャ湾の海上交通路について米政府からの圧力に直面するのはこれが初めてではない。
 1990年のイラクのクウェート侵攻を発端とする第一次湾岸戦争前後には日本も批判の対象となり、日本の石油の大半がペルシャ湾発であるにもかかわらず政府は米国主導の軍事活動に貢献することに消極的だとの見方も出た。

 最近では、日本はこうした批判を逃れており、その外交政策は米政府のそれに一段と沿ったものになっている。
 政府はイラク復興など米国の戦略的取り組みに資金面で重大な貢献を果たしている。

 エネルギー保障や他の懸案をめぐって高まる緊張を和らげるために、米中両国は昨年、両国首脳による年次会合「米中中東対話」を設けた。

 米政府高官は、両国政府が中東からのエネルギーの安定した流れという目的を共有することが共通の土台の形成や、シリアやイランなどの問題において米国とより密接に協調するよう中国政府を説得することにつながるよう期待した。

 しかし、非公式会合を通じた成果は限られていると関係者は述べた。
 6月の第2回会合後の国務省の発表では、米国は中国が「中東地域でより積極的かつ前向きな役割」を担うことを歓迎すると述べた。

 オバマ大統領は9月、米国は中東のエネルギーの流れに引き続き取り組むと国連で述べた。
 「米国は輸入石油への依存を着実に減らしているものの、
 世界は地域のエネルギー供給に引き続き依存しており、
 深刻な寸断は世界経済全体の安定性を脅かす可能性がある」
とオバマ氏は語った。


 簡単にいうと、中国はアメリカに「おんぶにだっこ」で石油を輸入している、ということになる。
 さて、このことについてアメリカがどうでるか?
 ということらしい。


ロイター 2013年 10月 12日 02:17 JST
 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE99A01S20131011

中国が世界最大の純石油輸入国に、米国抜く=EIA

[シンガポール/北京 11日 ロイター] -
 米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が今週発表した報告書によると、中国が9月、米国を抜いて世界最大の純石油輸入国となった。

 数十年来の経済成長でエネルギー需要が急拡大し、中国は来年にかけて世界トップの地位を維持し続けるほか、海外の石油・ガス企業の買収を加速させるとみられる。

 EIAによると、9月の中国の石油消費量は、国内生産量を日量630万バレル上回った。
 両者の差が輸入需要とみられる。
 米国では両者の差が同613万バレルだった。

 9月は米国の石油精製品輸出が急増しており、今後は米国が一時的に世界首位に返り咲く可能性もある。
 ただこれまでの傾向から、中国が米国に大差をつけ始めると分析されている。

 中国は過去30年間、2桁の経済成長を遂げ、自動車保有台数の急増などで燃料需要が増大した。
 エネルギーを国内で自給できたのも1993年までだった。
 コンサルタント会社ウッド・マッケンジーによると、
 石油を輸入に依存する割合は「昨年58%」となり、
 2020年には「70%」に達する見込み。

 ロンドンに拠点を置き、中国に販売する石油トレーダーは
 「中国の商社が各地に事務所を構え、地域のプレーヤーでなく世界で存在感を示そうとしている。
 大きな野望があり、とても積極的だ」
と話した。


ロイター 2013年 10月 12日 01:20 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTJE99A01920131011

米国が石油生産でOPEC非加盟国最大に、来年=IEA

[ロンドン 11日 ロイター] -
 国際エネルギー機関(IEA)は11日公表の月報で、シェールガス・オイルのブームに沸く米国が石油生産で来年ロシアを抜き、石油輸出国機構(OPEC)非加盟国のなかで最大の生産国になるという見通しを示した。

 IEAは、
 「米国が生産増を主導する立場に立つということは、数十年前への後戻りだ」
とコメント。

 「米国の生産はここ2四半期で日量1000万バレル以上となっており、2014年の第2・四半期までにロシアを抜き、OPEC非加盟国のなかで最大の液化油生産国となる見込みだ。
 これはバイオ燃料や精製の増加を含んでいない
とした。

 IEAによると、2014年の米国産液化油の生産量は日量1100万バレルと、ロシアの同1086万バレルを上回る見通し。

 米国産石油がけん引し、OPEC非加盟国全体の供給は2014年に日量170万バレル増加すると見込まれている。第2・四半期に増加幅は190万バレルと、1970年代以降最大の伸びを示すとみられている。

 一方、OPEC産原油の需要見通しについてIEAは、日量10万バレル引き下げ同2900万バレルと、現在の生産量を100万バレル下回る水準にした。

 2014年の世界の石油需要の伸びについては見通しを日量110万バレルに据え置いた。
 前年比1.2%の増加率に相当する。
 IEAはマクロ経済の改善を増加の理由に挙げた。




【トラブルメーカーから友なき怪獣へ】



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